(ひゃくしゅうぶどうぐてん)

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3Dフィットスキャン開発物語 その①

今となっては当店自慢の3Dフィットスキャン技術ですが、軌道に乗るまではそう簡単にできるものではありませんでした。ホント、挫折、挫折の連続です。

第1話 「もし採算度外視で、究極に自分の顔に合った面を作るならどうすればできるのか?」

兵庫のTさま、3D面組みが仕上がってまいりました!黒呂色の胴とバッチリです〜

兵庫のOさま、3D面組み仕上がりました!遠方からご来店いただきありがとうございました!

東京都のSさま、物見バッチリです!胴と最高ですね〜

東京のNさま 3D面組み仕上がってきました、サイズ物見バッチリです!!

愛知県のNさま、3D面組み仕上がりました、バッチリです〜

お金はいくらかかっても良い、売り物じゃないから。

納期も無期限。いくら時間がかかってもいい。

 

​とにかくこれまで店長がかぶった事がないくらい究極にピッタリあった面を作ってみたい。

シンプルにそこだけを追求する。

 

結論を言おう。

 

出来るには出来た。

これまでの常識では考えられない面が出来た。

 

ただ、この1台を作るのに防具に製作費以外に126万円と4年6ヶ月の期間がかかってしまったのだ・・・。

 

この方法なら私の面でも、あなたの面でも、1台だけでなく、何台でも、顔に吸い付くような面が何度でも必ず製作できる。今使っているサイズが合わない面でさえ、完璧にサイズをあわせることが出来るようになるのは間違いない。購入時のサイズの間違いも無くなるだろう。

 少し長い話になるので少しづつ順を追って説明していきたいと思う。。。

 

 

第2話へ続く。

第2話 常識を疑え。

そもそも「ぴったりすぎる面」とはどういう状態だ?

現状剣道具の面は「何センチ」といった具合に1cm単位で製作される。

だが、靴などをイメージしてもらうと分かり易いが、靴も面と同じように「何センチ」でサイズ展開があるものの、足の形は人によって様々。幅広い人もいれば、甲が高い人もいるだろう。メーカによってサイズの感覚も違うし、購入前に左右とも足を入れてみることは必ず必要だ。

 

だが剣道具の面の話になると急にサイズ合わせがおろそかになってしまう。

単純に何センチといった具合に寸法だけで合わせてるしか選択肢がない。

人間の頭部は足よりも遥かに複雑にも関わらず・・・だ。

 

ハチ周りが張り出していたり、アゴが出ていたり、頬が細かったり、面長だったり、丸顔だったり、男性だったり、女性だったり、しかも目と物見の高さまで正確に合わせるには

 

・頭のサイズ

・頭の形

・物見

・内輪の大きさ

・内輪の取り付け具合

・こめかみの張り具合

・アゴの細さ、出っ張り

・後頭部のはみ出し

・頬の痩せ具合

・下唇

・面の傾き

・額の角度

・将来的な内輪の馴染み、伸び

 

をすべて考慮にいれて逆算で面を組まなければ仕上がらないのだ。

 

はっきりいって、

「お店の人に測ってさえもらえば必ず合う」

とかいったレベルの話ではない。

 

たとえ計測どおりに面が仕上がっていたとしても、それでも人の頭部が複雑だから合わないケースだって大いにありうる。これまでは「その内馴染みますよ」と使うしか選択肢が無かったが本当にそうなのだろうか?

はっきり言おう。これまでのうようにこの「何センチ」という話をしている限り、いくら腕の良い職人でも一度に全部毎回合わせることは不可能だ。

常識を疑え。

私は思い切ってこの何センチというサイズの概念を一度頭から外すことにした。

そして、6年前の夏、私はとんでもないところからすべてを一瞬で解決する運命のヒントを得ることになる。すでに防具屋の発想ではない、驚きの方法だ。それこそが・・・・

 

 

第3話へ続く。

第3話 カツラ・カツラ・カツラ

あのカツラのアデランスが3Dスキャナを使ってカツラを作ってるだって!!(H26のプレスリリースより)私が6年前に見たのは新聞記事だったような記憶が・・・。

6年前の夏、、、私はお店で何気なく新聞を見ていたら驚愕の記事を目にした。それはカツラ大手のアデランスが3Dスキャナを使って人の頭部をスキャンし、これまでの常識では考えられないほどフィットするカツラを作り出した記事だった。

 

よくよく調べてみると通常の作り方だとカツラは頭の上にビニールをかぶせ、マジックで線を描いて頭部の型を取るという極めてアナログな製作方法だ。採寸する人が変わればもちろん微妙にずれる。

 

それが3Dスキャナを使えば誰が測っても「0.1ミリ」の精度で測定できるようになったいうではないか!!(剣道具の「1センチ」単位の剣道具の測定と比べれば雲泥の差だ。20倍の精度)

 

 結果、カツラのフィット感がこれまでの常識とは「劇的に」改善されたという話だ。

 

他にも医療分野、美容分野で義手や義肢を作る際の型取りや、オーダーメード車椅子を作る際のクッション、歯など極めて高い精度が要求され、サイズの失敗が許されない最先端の分野で当時3Dスキャナが結果を出し始めていた頃だった。

 

カツラをテレビCMをたくさんしている大手企業だからできるのか?剣道具という昔ながらの職人仕事には3Dスキャナはなじまないのか?

 

 いやそんなことはない!剣道の面を作るのにも必ず使えるはずだ!!

 

 

 

発想は良かった。

 

だた、後から分かったことなのだがこんな発想だけなら誰だって思いつくものだ。

 

実はそこから実際に形になるまでがイバラの道。そこから私は多額のお金と時間を投資し、挫折し、どんどん深みにハマっていくのだ。。。。

 

 

 

 

 

第4話につづく。

第4話 挫折。46万円を文字通りドブに捨てる

「3Dスキャナを使ってピッタリすぎる面を作る。」

繰り返すが、この発想自体は悪くない。

ただ、当時そんな発想をしている人はどこにもおらず(今でもいないと思うが)、私が住んでいる四国の香川県では3Dスキャナなどどこにも置いていない。

 

2012年12月17日。私は飛行機に乗って東京へ向かっていた。渋谷と横浜にある3Dスキャナとプリンタのショールームを訪れるためだ。そこでは主に企業向けに1台2千万円もする3Dプリンタをデモンストレーションして実際に3Dプリンタで印刷したスパナや人形など見せてくれた。3Dスキャナについてもハンディ型とはいえ、1台250万円。ソフトや保証もいれると350万円のものが1番安い。とても地方の小さな武道具屋で導入できるような話じゃなかった。

 

香川にもどった私は業務用の3Dスキャナはあきらめて、家庭用の3Dスキャナを購入することに決めた。

 

・3Dスキャナ本体 Microsoft Kinect センサー  商用 Amazon.com Int'l Sales ¥ 11,181

(このスキャナは精度が悪く結論からいうと使い物にならなかった)

 ・3Dスキャナ用高性能ノートパソコンその1  200,000円

・3Dスキャナ用高性能ノートパソコンその2  200,000円

・3Dプリンタ商品名 2012/12/17 :3D TOUCH ダブルヘッド + ダブルヘッド用スターターパック  ご注文番号:PC14224703851169518     金額   :462365 円

・業務用3Dスキャンソフト Artec Studio 9 (Date of order: 11/21/2012 12:25:47 PM UTC

Shipping Method: Online Delivery

Subtotal: € 500.00

Shipping and handling: € 0.00

Total: € 500.00) 

経験は全くない、知識もないが、道具さえ揃えば大丈夫と思っていた私はやはり甘かった。

 

はっきり言って全く使いこなせない。

問題の解決をしようにもソフトウェアのインストールからして出来ないレベルだった。サポートが海外なのですべて英語。しかも相手はロシア人のようだ。

何から何までうまくいかない。

とても素人が手を出していい分野ではない。

3Dプリンタは実物大で頭ひとつ印刷するのに72時間もかかる。大きいものは苦手なのだ。閉店後に印刷を開始して帰宅するのだが、朝お店へいくと床中に失敗した印刷物が散らばっている。そんな状態が毎日続く。2回に1回は失敗といった具合だ。

 

数ヶ月後、私は3Dプリンタを手放す決断をした。

決済ID                  : 131003168870

 振込金額                : 190,000 円

 入金(予定)日          : 2013年10月7日

■オークション内容

 商品ID                  : e138257156

 落札者                  : prog7580

 商品タイトル            : 3Dプリンタ 3Dtouch 人気! 即決 即売りたし 送料無料

 

すべて全部まとめてたったの19万円だ。それでも良いほうか。。。

 

夢は破れた。金銭的にというよりも心が折れた。何時間かけても何日かけても満足のいくレベルのものは仕上がらなかった。

「武道具業界を変える!」と調子にのっていた自分が恥ずかしかった。

「もう二度と3Dスキャナには手を出さない!」

私は心に固く誓った。。。

 

ただ、人間とは愚かなもの。

5年後の2017年、私はもう一度3Dスキャナに向かい合うことになるとは当時は思っても見なかった。そして前回以上の泥沼にハマってしまうのだ。。。ただひとつだけ違うのはついに完成するのだ。あの「ぴったり過ぎる面」が!!遂に!!!

 

 

第5話へつづく。

第5話 悪夢再び。諦めきれなかった夢。

東京大手町のおしゃれなレストランで職人さんとカフェ打ち合わせ。コーヒー1杯1,300円なんて田舎じゃ考えられんわ。。。

どうしても面がうまく合わない人がいた。

飛行機に載って東京まで会いに行った。

お客さんはお仕事中に会議室と時間をとってくれた。

百聞は一見にしかず。

サイズの話もあるが、確かにいただいたお写真や想像よりも、頬が痩せていてアゴが出ているし、脳天も出ている。特殊な頭の形だが、たしかにこれでは内輪がうまくフィットしない訳だ。

東京まで来てよかった。自分でもアフターフォローとしては良い仕事をしたと満足していた。

 

香川にもどってから私は自信を持って、職人に伝えた。

「この方、面を組み直してください。頬が痩せていて、アゴが出ていて、脳天が出ています。」

これで万全だと思った。

数週間後、組み直した面をお客様に送った。

「宇賀さん、こんどは大きすぎます、横幅もやはり全然あいません!」

「???」

私は最初は理由が分からなかった。私の伝え方が悪かったのか、職人の仕事が悪かったのか。ただ、このままでは私としても仕事をした内には入らない。

「Aさん、大丈夫です。もう一度だけ時間をとってください。

こんどは面組みの職人さんと二人で行きます。必ず合うまで対応します。」

今回は職人にも無理を言って飛行機代を支払って東京まで来てもらった。チケット代だけで既に15万くらいかかってる。失敗は許されない。

実際に職人さんに道具を持ってきてもらいもう一度Aさんの職場を訪ねた。職人は道具を持ってきていてその場で面を手直ししたり、お客さんの頭を細かく計測したり、かぶってもらったりしていた。その後、持ち帰ってきっちり直してもらった。

 

面の方は無事合うようになったのだが、ここからが本題だった。

私はその日、職人さんと東京駅隣のホテルのレストランで職人さんと今回の件についてじっくり話をすることが出来た。

 

職人さん:「宇賀さん、面職人というのは頭のサイズと顔の形を伺ったら、使い手の頭の形を想像しながら作るんですよ。そこが腕の見せどころです。」と教えてくれた。

一瞬納得しそうになったが、ということは一度目の調整でうまく合わなかったのはそのせいでは??想像でやってる限りうまく合わないこともあるはず。

 

次の瞬間。ヒントが見えた。

店長:「でも想像だったら合わないときもあるんじゃないですか?」

職人さん:「いただいた寸法が正しければ、だいたい合ってると思いますよ。」

 

店長:「じゃもし、お客さんが面を組む際に、仕事場へお邪魔して目の前にいる状態でじっとそばで立っててくれて文句も言わず、何時間でも、何度でも頭を細かく計測させてくれるなら??」

 

職人さん:「そりゃそれなら絶対にピッタリ合いますよ(笑)。自信があります。でも遠方だし、それが不可能だから頭のサイズを測ってもらっているんじゃないですか。普通は面は海外で製作しているのでそんなこと言い出す人はまずいませんよ」

 

後頭部を竹刀、いや赤樫の木刀で殴られたような衝撃だった。

こりゃ面が合わないという話がこの業界で無くならない訳だ・・・。

 

しかも最近は剣道具の購入は通販が主流。いくらオーダーメイドでも仕上がってみるまで分からないなんて、バクチをしているようなもんだ。

完璧にピッタリすぎる面を作るには面を組む際に職人さんの横にいないといけない。これ以上はない。だが現実的に職人が面を組むタイミングでそばにいることなど不可能だ。

 

やはりあの方法しかないのか・・・。5年前に一度諦めたあの方法を・・・。

3Dスキャナと3Dプリンタを使って頭の実物大の型を元に面を組むこと。

そうすれば、職人さんが面を組む時に隣にいるのと同じことだ。

 

出来る!今回こそ出来るぞ!!

そして5年後しにプロジェクトが再開、そして遂に完成するのである。

 

第6話につづく。

第6話 俺本当に、防具屋???

頭部の実物大を作りたいならと紹介されたNC工作機械のイメージ。
 
​こんなん無理やろ!うち剣道の防具屋やで!

過去の失敗が頭をよぎる。

思い出す苦痛。

​やはりまったくやり方が分からない・・・。

 

もう失敗はしたくないので

今度は3Dプリンタを買う前に一度使ってみよう。

 

以前から5年ほど経っているが、時代は変わっているのだろうか?

 

今回は大阪へ車を飛ばしていた。

3Dプリンタを体験できるファブスペースへ。

 

私「教えてください!頭の実物大コピーを作りたいんです!」

 

お店の人「いや、実物大なんて相当厳しいと思うよ。何に使うの?」

 

私「サイズがぴったりあったオーダーメイドの面を作りたいんです!」

 

お店の人「面って、演劇なんかで使うお面??」

 

私「失礼しました。剣道の頭にかぶる面の事です。」

 

​お店の人「いずれにしても出力だけで時間も3日くらいかかるし、コストだって数万円、下手したら数十万円だよ。それなら3Dプリンタじゃなくて工業用のNC工作機械で削るもんだよ

 

その日はそのファブスペースに設置してあった2台のうち1台が作動していた。

それを脇目でみながら、まさか将来、自分の武道具店に3Dプリンタが8台も並べられる日がくるとはその時は知るよしも無かった・・・。

 

​第7話へと続く。

 

第7話 40歳過ぎて学校へ行く羽目に・・・

CADの授業で製作したネコのクッキー型。これが夢の剣道具作りに活かされると信じて・・・(明らかに関係ない?)。

技術的な話になるとつまんないんだけど、

どうやら3Dデータを扱うにはCADソフト(コンピュータ支援設計)が必要らしかった。

CADソフトだけ購入しても結局使い方が分からず、

四国の香川県から大阪のCAD学校へ学びに行くことに・・・。

 

周りは専門の仕事をしている人ばかり。

防具屋なんて当然1人もいない。

 

​完全に場違いだ。

 

CADソフトのソフトウェアの講習は真面目にやった。

ネコのクッキー型作ったり、コップを作ったり、スマホケースを作ったり・・・。

(やりたいことはあるのだが我慢、我慢。すべての道はつながっていると信じて・・)

 

そういえば、アメリカのスタートアップ企業から購入した最新式の3Dスキャナについてはもう1年くらい待っているが未だに届いていない・・・。メールの返信もないし、新手の詐欺にあったか?(これはH29.6時点で現在進行中の話だ)。

 

​とりあえず、今は3Dスキャナを持っていないので東京の企業に自分の頭を3Dスキャナで計測してもらいに。

 

第8話に続く

 

第8話 スキャン一回に2万円もするんかい!

スキャン1回20,000円、頭部の印刷400,000円。いろいろ調べた結果、これが最安値の見積もりだった。

オバマ前大統領と同じスキャナでスキャンしてもらった。さすがに高品質。

平成28年6月3日(月) 17時。

私は西新宿に来ていた。

目的は、プロに一度自分の頭部を3D計測してもらうため。

250万円の美容分野や医療分野で使われるArtecというスキャナで

スキャンしてくれるサービスがあると分かりすぐに東京行きの飛行機のチケットをとっていた。(オバマ前大統領もスキャンしたというプロ仕様の機器だ)

 

いろいろ調べた結果、最安値の見積もりが

スキャン1回・・・20,000円~

頭部の印刷・・・・400,000円~

だった(西新宿のオフィス24さん)。

 

印刷の見積もりは決して間違いではない。

4万ではなく、40万。これでも安い方。

中には90万とか、120万とか考えられない見積もりもあった。

スキャン費用も5万円くらいが相場のようだ。

 

だが、スキャン自体はものの3分。あっという間。

「これで2万円か!田舎モンには考えられん商売やな。東京はやっぱり怖いところや。」

さすがに40万かけて印刷はできなかったが、

後日、自分の頭のスキャンデータがメールで送られてきた。

 

これであとは印刷すればいいだけ。

そう思っていた私はとんでもない間違いだった。

これから本当の地獄が始まるのである

 

​第9話へ続く。

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R2.11より百年防具の製作台数を10台/月に限定させていただくことになりました。最高品質(材料、職人、打ち合わせ)を維持するため、何卒ご了承ください。製作枠が一杯の場合は翌月枠での製作になります。※ご検討中の方は、製作枠だけでも先に押さえてください(キャンセル可)

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百年防具➡6ヶ月〜1年
手刺し防具➡6〜9ヶ月

引き続き、製作が混んでおります。当店のオーダーメイド剣道具は一般的なミシン刺剣道具のように大量生産が出来ません牛歩の歩みではありますが、1台、1台、しっかり物見を合わせて納品させていただきます!

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